『ビバリウム』は、2021年3月12日より日本公開された
ロルカン・フィネガン監督によるスリラー映画です。
あらすじ
幼稚園の先生のジェマと庭師のトムは新居を探していますが、中々良い物件が見つかりません。
ある日訪れた不動産屋には、怪しい言動の「マーティン」が、貼り付けたような表情と
営業トークで内見を進めてきます。
流されて向かった先は、形も色も全く同じ家だけが並んでいる住宅地。
マーティンも家も怪しすぎるため、二人は簡単に見てさっさと帰ろうとしますが、
目を離したすきに、いつの間にかマーティンはいなくなっていました。
今のうちに帰ろうと車に乗りますが、いくら走っても住宅地から出られない。
それどころか、内見した家に何度も戻ってきてしまいます。
仕方なく家に泊まった次の日、家の前には食料や生活用品の入った段ボールが置かれていました。
理解しがたい現象ばかりで戸惑う二人は、様々な脱出方法を試しますが上手く行きません。
そんなある日、今度は赤ちゃんの入った段ボールが送られてきました。
何故赤ちゃんが送られてきたのか、そして二人は脱出出来るのか・・・
感想
観ていて『世にも奇妙な物語』が思い浮かびました。
不思議な事ばかり起きるようなパターンの話がそれっぽい。
ホラー要素は控えめですが、明るくても不気味な空気が漂い
二人が精神的に参っていく様子を見せられます。
生活するシーンの変化も、精神的な変化を示しています。
マーティン役のジョナサン・アリスの無機質な演技がはまっていて、
不気味さをさらに底上げしていました。
特殊な視覚効果も多いので、映像に委ねて楽しむのも良いです。
監督作短編映画も観ましたが、この目を引く映像と不気味さを魅せるのが
彼の作風なのだと思います。
※ネタバレあり感想はこちら↓※
作中にも出ている、カッコウの習性がテーマになっています。
異空間に閉じ込め、子供が人間ではありえない発声器官を出せたり
読めない言語の本を持っているので、宇宙人か異世界の生物でしょうか?
食事まで用意出来るのならば、自分たちで育てられるのでは?と思いましたが
カッコウと同じく、育てるのが難しい事情があるのかもしれません。
カッコウの場合は体温変動が大きいから、という説がありますが
この生物の場合「人間らしい人格形成のため」という理由がありそうです。
人間社会に上手く溶け込めるようにすることで、次の親も捕獲しやすくするとか。
とはいえ、あの極限状況で強制的な子育ては難しそう・・・
実際、トムとジェマはあの子供をまともに教育していないですし、
このシステムが成功しているかは怪しいところ・・・
二人が最終的にシステム通りに子供を育てて死んでしまい、
謎もほとんど解明出来ずに終わってしまいますが
脱出出来る可能性はあったのでしょうか?
トムはかなり早い段階で内見した家を燃やしたり、子供を餓死させて現状打開を図ったり
最後はひたすら穴を掘り続けて肺と腰をやられてしまいます。
衝動的でジェマの提案も聞かず、最後は逃避行動に集中してしまいました。
ジェマは比較的冷静で、子供の持ってきた本の解読をしたり
会話でヒントを得ようとしたり、子供の外出時に後をつけたりと積極的に解明を試みます。
ただ、恐怖や強い圧力、悲劇の前では感情に負けてしまい、
それ以上行動出来なくなっていました。
ジェマが分析してトムと相談し、二人で行動出来ていれば
謎の解明はもう少し進展していたかもしれません。
ただ、ゲームオーバーになりそうな行動もかなり多いので
良くても子育てする謎や、異空間のシステムに気付く止まりでしょうか・・・
本やTVを読み込んで解読する
→その内容に精神をやられてしまいそう
二人の体力があるうちにマーティンをぶん殴って逃げ道の異空間を出させる
→脱出口は無いかもしれない
出来ることといったら、マーティンが逃げ込んだ先の異空間で見つけた
別の被害者に「マーティンを殴れ!」とか伝えて行動を進めさせて
後を託すくらいでしょうか・・・?
どちらにしろ、トムとジェマの二人は詰んでしまっていた気がします。
謎の部分に気を取られていましたが、あまり明かしてこないことからも
そちらを注目させるタイプではなく、
目を引く映像と不思議な空気感を味わうのがメインの作品といった印象でした。
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